akisai “colors” 発表記念インタビュー
2014年3月にSCHOLEよりデビューする、中家紘一(映像)と、鈴木要(音響)によるプロジェクト「akisai」。「colors」と名付けられたその作品は、とてもバラエティに富んだ音楽のエッセンスが混ざりながら、楽曲の表情を自由に変える豊かなメロディラインが聴き手の心を感動させ、スタンダードに、そして功名に展開される楽曲構成が独創的な世界を構築している。今回SCHOLEよりリリースするのはakisaiの「音楽」であって映像ではないが、制作のプロセスを聞いていくとお互いに影響し合って現在に至る事が垣間見えた。音楽のみで簡潔せず、音楽と映像の掛け合いによって到達した現在までの事、現在のakisaiを形作った影響について訊いてみた。
SCHOLE : akisaiさんを知ってから1年くらいになるのですが、それ以前の経歴をふまえた自己紹介をお願いします。
鈴木 : akisaiは音楽と映像のユニットで、音楽を鈴木、映像を中家が担当しています。 結成のきっかけは、自分の姉がファションブランドをやっていて、そのブランド用の音楽や映像をお互いに依頼されたのが中家さんと知り合ったきっかけでした。 それから2人で何か面白い事を始めようか、という話になりakisaiというユニットで活動することにしました。 結成当初は音楽にイメージ映像を合わせたものをyou tubeにアップするなど、水面下で活動している感じでした。
中家 : 当初は「この音楽と映像でプロモーションをしてakisaiとして活動していくんだ!」みたいな強い上昇志向があった訳ではなく、 違う分野を得意とする人間と組み、足りない物を補い、新しいものを作って、好きな事ができればいいなと思ってました。
鈴木 : だから、コンスタントに活動していた訳ではなく、お互い気が向いた時に活動していました。
SCHOLE : それは何年前ですか?
鈴木 : 5、6年前ですかね。その後ライブをやってみたいなと思う様になり、2、3年前に準備をしていたのですが、ちょうどライブのお誘いを頂き、ライブに出る事になりました。 それから徐々にakisaiとしてライブに出たりする様になりました。それに合わせ曲も作りつつ、活動してきて今に至ります。
SCHOLE : 映像と音楽のユニットという事ですが、今回はCDという形でakisaiの音楽を発表するわけですが、鈴木さんのルーツや、良く聞く音楽を聞いても良いですか?
鈴木 : 小学校3年生当時、姉がピアノを習っていた影響で自分も習い始めました。そして自然とクラシック音楽を聴くようになりました。当時はドビュッシー等の印象派が好きでよく聴いてましたが、その中でもアヴァンギャルドで難解な曲よりはポップな曲の方が好きでした。中学校の高学年から高校にかけては兄の影響でプログレというジャンルを聴くようになり、どっぷり浸かっていました。特にジャズの要素が色濃く出ているようなアーティストを好んで聴いてましたね。フランスのMAGMAというアーティストはすごく好きで、今でもよく聴きます。また、同時にポストロック(stereo lab、Tortoise、Sigur Rós等)も聴くようになりました。大学に入学時に複数の軽音楽サークルに入りバンドを始めるようになったのですが、サークル毎にジャンルや色があって、J-POPやメタルからジャズ、フュージョンまで色々経験しました。自分がいた大学では慢性的に鍵盤奏者が足りてなくて、10個ぐらいバンドを掛け持ちしていたこともありました。ジャズはオスカー・ピーターソンやビルエヴァンスを良く聞きますね。J-POPで言うと大橋トリオさんとか安藤裕子さん、土岐麻子さんあたりを良く聞きますかね。いざ聞かれると、あまり出てこないものですね。エレクトロニカ系やSCHOLE所属のアーティストはここ2~3年で聞く様になりました。宮内優里さんは良く聴きますし、いろいろ参考にしています。
SCHOLE : アイドルは聞きませんか?
鈴木 : アイドルはあまり聞きませんね。 ただ、曲のクオリティの高さというか、良く出来ているなぁと感心させられる事は結構あります。AKBとかすごいですよね。恋するフォーチューンクッキーなんて、レトロな中に分かりやすいリズムとメロディがあってキャッチーで。本当に秀逸の出来だと思います。
SCHOLE : 大学卒業してからの事を聞いても良いですか?
鈴木 : 知り合いに舞台をやっている人がちらほらいたので、その舞台用の音楽を依頼されて作ったりしてました。また、シンガーソングライターのサポートで鍵盤を弾いたり、自分で企画バンドを作ってライブに出たりた。舞台用の音楽を作ったりする中で、尺や曲風を含め色々な注文に対応する能力は養えたかなと今では思います。
SCHOLE : なるほど、ありがとうございます。楽曲制作についてですが、今回一緒に掲載させてもらっているアーティストQuentin Sirjacqは以前、曲作りに関して特にイメージは持たず、己の潜在意識(それは自分の経験、見たもの、聞いたものが形成する)からでてきたものを音楽にしている、と言っていたのですが、鈴木さんの場合は制作する際、楽曲の具体的なイメージは持っていたりするのでしょうか?
鈴木 : 僕の場合も、特に楽曲に対してイメージを持って作ることはあまり無いですね。即興的にピアノを弾いたりして、良いフレーズが出てきたらきたらそれを膨らませていくと言った感じですね。あと、後から映像がのる事を考えた曲作りはしますね。なんと言うか、映像と一緒になることを常に意識はしています。
SCHOLE : その映像を合わせる事を意識するのとしないのでは、曲作りに違いがあるのでしょうか?
鈴木 : 映像の事を考えないと、例えばですが、バンドっぽいサウンドになってしまったりしますね。映像の事を考えて、電子音を足したり、アンビエント的な音を入れたり、時に映像を際立たせる事も視野に入れた音作りをしますね。
SCHOLE : 中家さんの映像の色が合って、それにどういう音が合うのだろうか考えて、それを意識しながら音楽を作っているのですかね?
鈴木 : そうですね、中家さんの映像はどちらかと言うと抽象的で、その独特な抽象性は意識しますね。
中家 : 僕は鈴木の作る音がまずあって、それを聞いて出て来たイメージから映像を作り始めるので完全に音に合わせて作ってますね。恐らく、お互いがお互いの色を付き合いを重ねる毎に知っていき、それに寄せて作っていると思います。そこから始まって、お互いのイメージを出し合って、どちらかのイメージに合わせたり、修正したりしています。
SCHOLE : と言う事は、音が先に原型を作ってそれに合わせて映像を合わせていくスタイルですかね。
中家 : そうですね。でも最近ではライブの為に修正して、映像に合わせて全く違う曲になったりする事もあります。曲ができて、映像を合わせて終わり、ではなく、常に状況に合わせベストな音、映像へ変化させたいと思っています。それは単に自分の中の流行りだったり、気分も影響して同じ曲でもアプローチが変わります。そういった変化も楽しんで、その時に自分たちが思う事を映像と音に反映させて表現するのもakisaiっぽいかなと思います。
SCHOLE : お互いが制作作業に対しては干渉しないけど、作り出されるものが干渉し合って、影響して成り立っているんですね。
中家 : お互いが個々にやっている仕事の時は、映像のために音楽を頼むだったり、音楽だけで作るという形が多いんですけど、akisaiは、ユニットとしてやってるので、相手から受けたものを還元しているので、個人でやっているものとは全く違うものができる気がします。ただ、お互いの分野をきっちり分けて、作るものに対しては口出しはしません。年を重ねるごとにお互いの事が大体分かってきたというのもあります。
SCHOLE : 今回のアルバムはcolorsというタイトルですが、このタイトルにした理由をお聞きして良いですか?またこのアルバム全体のモチーフや、イメージ、コンセプトなどはあるのでしょうか?
中家 : 僕らがちょうど活動をやってきた事をまとめて、皆さんに聞いて頂く機会を作りたいなと思っていた時と、SCHOLEから声をかけて頂いた時が一致したんです。その中で、もちろんアルバム用に楽曲は鈴木が編集したり、録り直したりはしてたのですが、特に新しい曲を作ろうとした訳でなく、今までできた色々な曲(色)をパレットに並べて、どれを収録しようかなと考えていたイメージがあります。その色を現在持てる技術で混ぜて新たな色を作るみたいなイメージもありました。その事は特に鈴木に伝えた事はないんですけどね。笑
鈴木 : 今初めて聞きました。役割分担も2人の中ではできているんですよ。映像だけではなく曲名を決めたりする事も中家さんがやっています。
SCHOLE : 曲名を見ると造語のものがいくつかあったのですが、なぜ造語にしたのですか?
中家 : 曲を聞いたときのイメージが映像になって、キーワードが曲名になります。 ですので、2つ出てきた時は混ぜたりしてます。今回、今まで作ってきた楽曲をアルバムにするにあたって、「造語とかスベッてるんちゃうかな」とか思ったのですが、今まで使い続けた物を変えるのも違うと思ってそのまま使わせて頂きました。
SCHOLE : 各曲の解説をお願いしてもいいでしょうか?
鈴木 :
1. line akisaiは割と暗めの曲が多かったので、明るい曲を作ろうと思って作った曲です。爽やかで疾走感のある曲に仕上がったと思います。メインのメロディやコード進行は割と切なげな感じなのですがそれを感じさせないように、あくまで楽しい雰囲気になるよう注意を払いました。ライブではよく1曲目にやっているので、今回のアルバムでも1曲目にしました。
2. idearythmical けっこう古い曲で、「akisaiっぽさ」の礎となった曲です。自然とakisaiの中ではキラーチューンになっていきましたね。ちょっと憂鬱な感じで始まるんですが、中盤から入ってくるギターの絡みで目の前が開けてきて、中盤はドラマティックに展開していきます。広い空間で鳴っているような音と、狭い空間で鳴っているような音のコントラストがうまくいったと思います。
3. synchrotonica akisaiで初めてエレクトロニカっぽい曲を作ろうと思って作った曲です。僕の中では精一杯イケイケな曲のつもりです。そして曲の終盤にはエレクトロニカにはあまりない、まさかの展開が・・・作ってて自分で笑ってしまったんですが、こういうのもあっていいんじゃないでしょうか。こういうのはJ-POPの影響ですね。
4. theory 元々はyoutubeにアップしているプロジェクションマッピング動画のBGM用に作った曲なのですが最終的に曲を仕上げていく中でけっこう盛り上がる曲になりました。なのでライブではよく最後に持ってきたりします。キラキラ感があって、ベタな展開の曲ではありますが、ちょっぴり切ない、親しみやすい曲だと思います。
5. biotopia 中休み的な軽い曲です。アンビエントな要素もありフワッと聴けると思います。ライブでやったらいろいろと面白いことができそうな曲です。
6. yumecasy この曲は元々別のアレンジだったのですが、アルバム用に作り変えました。モヤの中を彷徨っているような、同じところを何度も行き来しているような、そんな気分にさせてくれる曲なので、曲のタイトルに「夢」という言葉を入れこみました。ただ、今回のアレンジ変更で夢っぽさは薄れてしまいましたけどね。笑
7. phase 「the akisai」ともいうべき曲ですね。切ないピアノのメロディにいろいろな楽器が重なっていってドラマティックに展開していきます。全体的に霧がかっているような、そんな雰囲気の曲です。
8. memoment 個人的には今回のアルバムの中で一番うまくいった曲です。トランペットを入れたことでちょっとジャズっぽい雰囲気になりましたね。ビートのはっきりした曲なんですが、不思議なアンビエント感もあります。最後に出てくるブルージーなソロは、あまりこの種のジャンルではみられないので新鮮な感じがすると思います。鍵盤奏者としてのエゴを少し出した結果ですね。
9. flow akisaiのかなり初期に作った曲で、多分6~7年前の曲です。ちょっとジャズっぽいスモーキーな雰囲気を目指したんですが、甘いトーンのギターとローファイなリズムの絡みがうまくいった気がします。アルバムに収録するにあたってリズム系の音を作り直したり、環境音を差し替えたりしましたが、それ以外は当時のままのものを使っています。
10. eternitica いまのところ一番新しい曲です。トランペットでメインのメロディをとっていますが、あまり演奏がうまくないので、今回の録音の前にはかなり練習しました。ゆったりと憂鬱な感じで始まるのですが、途中で倍転して気持ちいい疾走感に変化していきます。最後はちょっと物悲しいような、まだ曲が続きそうなが印象で終わるので、逆説的な意味でアルバムを締めくくるにはぴったりの曲だと思いました。2ndアルバムに続きますよ、みたいな。
SCHOLE : ギターが目立つ曲が多い気がするのですが、作曲はギターから始めるのですか?
鈴木 : 実はほとんど鍵盤から始めます。元々自分は鍵盤奏者で、ギターは嗜み程度にやってたのですが、曲作りのために録音したり、ライブのために練習してたらいつの間にかある程度弾ける様になしました。曲を作るときはメロディ先行かコード進行先行の場合が多く、それにリズムを足していくうちに曲らしくなっていきます。今回はギターが目立つ曲が多くなってしまいましたが、ライブでもギターの演奏がメインだったりするので、自然な流れだったのかもしれません。
SCHOLE : akisaiの場合は、選ぶ楽器だったり、音色だったり、展開に映像が影響しているのですか?
鈴木 : 展開の部分については意識しませんが、音の重ね具合というかテクスチャーって言うんですかね。音のレイヤーというか、その点は意識しますね。
SCHOLE : 展開という事では面白い展開をする曲もあれば分かりやすい展開をする曲もありましたし、音色で言えば、アコースティックや電子音を混ぜたりしているし、ジャズやフォーク、ポップスの要素が上手い具合に折り込まれているなと思ったのですが、その点はどう思われますか?
鈴木 : 冒頭のの部分でも少し出てきましたが、僕は結構J-POPが好きなんです。分かりやすいAメロ-Bメロ-サビみたいな、ベタな展開が好きですね。ずっと同じコード進行と同じ雰囲気でっていう曲はあまりなくて、何かしら自分なりに展開させてますね。色んな音楽の要素を足したりしているって意識は無くて、自分のルーツだったり演奏してきた音楽をベースに組み立てているので自然といろんなジャンルの音楽が混ざってしまっているんだと思います。
SCHOLE : akisaiにとってライブとはどんなものですか?
鈴木 : ストレス発散って言ったらおかしいですけど、テンション上がりますし、純粋に楽しいですね。演奏もあまり上手いとは言えないと思うのですが、思いっきり弾くのは良いですね。後は中家さんのライブでの映像を実際見れるってのも楽しみの1つですね。と言っても、演奏中は自分の立ち位置からは映像が見えない場合がほとんどで、ライブ映像を後から見て、こんな映像出してたんだ、と楽しんでいます。
中家 : akisaiらしいパフォーマンスができる1番の場所かなと思います。お客さんに映像と音楽っていうスタイルを直に見て頂けますからね。昔はあくまで作品としてyou tubeなんかにアップするくらいだったけど、ライブをやるにつれ、空間を含めてakisaiらしさを出していきたいと思う様になりました。
SCHOLE : やっぱりお客さんには、のって欲しいですか?
鈴木 : のって欲しいですけど、ライブ中はプロジェクターの光を真正面から浴びてる場合が多いので、眩しくて観客が見えないんですよね。。。
中家 : 後からライブビデオ見ると案外ノリノリなお客さんがいて驚いたりします。
SCHOLE : のりやすい曲多いですよね。4つ打ちの曲もあるし。
鈴木 : クラブ系のイベントに誘われる事が多かったので、それに合わせて作った曲もありますね。
SCHOLE : ライブからの影響が曲作りに反映されているのですね。
鈴木 : そうですね。昔はアコースティックな曲ばかり作っていたのですが、ライブやろうって言い始めてから、電子音楽を取り入れたり、4つ打ちの曲を作り始めましたね。
SCHOLE : 最後にリスナーへのメッセージと、今後のakisaiの方向性が決まっていましたら教えていただいても良いでしょうか?
鈴木 : 自分はいろいろなジャンルの音楽を経験しましたが、巡り巡ってJ-POPのような分かりやすい音楽が好きなので、普段音楽を聴く人も聴かない人も分け隔てなく楽しめる内容になってると思うので、色々な人に聞いて頂きたいです。あと、映像に関わる人や空間演出に関わる人、様々なメディアに関わる人にも聞いて頂いて、何か一緒に作りたいですね。akisaiの今後の方向性としてはお互い影響し合いながら、ライブ活動や作品作りを継続していきたいと思います。
中家 : akisaiの音楽を皆さんに聞いて頂ける機会を得たので、皆さんに楽しんで頂いて、これをきっかけに色々な方と関われたらいいなと思います。たくさんの人に出逢い、新たな場所で新たなパフォーマンスを作って、実現していきたいですね。自分たちの空間作りを突き詰めていきたいです。後は、色々なところにライブに行って、美味しい物を食べたいですね。
SCHOLE : ありがとうございました。
akisai
東京を拠点に置く中家紘一と鈴木要による映像 / 音響プロジェクト。
個々の活動と平行して自由で実験的な作品制作の場として活動を開始し不定期に作品を発表する。
結成当初より、実写•グラフィックを重ね合わせた繊細かつ大胆で多彩なビジュアルイメージと、エレクトロニカ、アンビエント、生楽器など様々な要素を取入れた音楽性を融合させた分野の枠を超えた作品展開を続けている。
近年では実時間・即興性などを重視したパフォーマンス的要素を取り入れた新たな表現の形を構築し、視覚的要素と聴覚的要素が交差する独自の世界観に包まれた空間演出をを行う。
2014年、SCHOLEよりファーストアルバムを「colors」をリリース。
今後は、実験的な表現を追求し作品制作を継続していく中で、様々な分野に関わる表現者・空間との、感覚を共有する新たな試みも目指していく。