far islands and near places / Quentin Sirjacqによる作品解説
This music has several meanings for me.
I wanted to add new sounds to my piano playing. After the solo album Piano Memories, I felt the need to connect the piano with instruments and sounds that could extend the resonances of the piano as well as add a more rhythmic quality to it.
Firstly keyboards like fender rhodes, or synthesizers, clearly bring an electric quality. These instruments belong solely to a certain musical style and era (namely « amplified music » which began in the mid twentieth century, from pop to electronic music). Secondly, I wanted to add the sounds of percussion keyboards like marimba, vibraphone and glockenspiel. They bring a rhythmical aspect that helped to make the polyrhythmic patterns of my music come out – and also give an ancient sound quality. These are the first two elements of orchestration.
The third element is that of creative mixing. It was very important to me to blend the first two elements through a mixing style which is influenced by modern techniques of sound engineering. The entire album is based around the idea of emphasising piano sound through two specific vehicles: a modern aspect linked to technological devices and an old fashioned one based on piano and percussion which is not as contemporary. This describes the sonic quality of the music.
In more artistic terms I wanted to connect the very sensitive aspect of piano touch and feel and its narrative, with a contemporary way of rendering sound. The final goal was to allow the listener to travel to different subconscious places, by using classical composition techniques from classical music, jazz or song-writing in conjunction with todays way of hearing and producing music through new technologies. Ultimately I hope that this music will trigger several layers of interpretation relating to different periods of experience in our own lives, and to time travel between different ages in our individual and collective life stories.
I believe the music of today should allow us to care more about our inner life and self understanding in order to become more peaceful individuals and more able to acknowledge the complexity and mystery of the human condition. It is important to make specific music for specific communities or specific moments in life but I have always been searching for a musical sound that would blend as many possible worlds into one entity – with the sincere desire to open our senses to the stories, environments and realities that we share.
この音楽には、幾つかの自分なりの解釈がある。
私は、自分のピアノの音に、新たな音を付け加えたいと思っていた。ソロアルバム「Piano Memories」リリース以降から、ピアノの共鳴を拡張してくれる音や楽器、またリズミカルな部分を強調することの必要性を感じるようになった。
最初に着目したのが、独自の音楽ジャンルや時代(20世紀中頃から派生したポップやエレクトロニック・ミュージックに見られる「アンプリファイド音楽」)を作りだしてきた楽器、フェンダー・ローズやシンセサイザー等のキーボード等が聴かせる電子的な音響である。次に、マリンバ、ビブラフォン、グロッケンスピエル等の打楽器的な鍵盤楽器の音である。これにより、自分の音楽にポリリズムのパターンを加えられ、かつ原始的な音を使った、新たなリズミカルな一面を見せてくれる。この二つの要素が音楽に加えられた。
三つ目に、クリエイティブにミックスすることの必要性。最初に述べた二つの要素を、現代のサウンド・エンジニアから学んだ技術を利用してミキシングすることの重要さを知ったのである。この過程を通して、ピアノの音の二つの側面(テクノロジーを駆使したモダンな側面と、ピアノとパーカッションを使用した古風な側面)が聴こえてくるようにアルバム全体に演出したのである。これにより、双方の音質の対比が確認できるであろう。
もっと芸術的に解釈してみると、ピアノが本来持っているタッチ感、感情、物語性等の繊細な側面を結び付け、コンテンポラリーな表現方法を試みた。最終目標として、クラシックやジャズに見られる伝統的な作曲技法と最新テクノロジーが結びついて創られた音楽を通して、リスナーが潜在意識の世界を旅してもらえることが理想である。究極的には、この音楽が人生における様々な経験や一面を想起してくれる引き金となり、時空を超えて人生のステージを旅することができるようになってほしい。
現代の音楽は、精神生活を豊かにしてくれたり、感情を温和にしたり、複雑な気持ちや未知の部分を発見してくれるものであると信じている。特定のコミュニティーや時間のために、特定の音楽の必要性を感じているが、自分は様々な可能性を秘めた音楽の結晶を常に探している。その音楽は、私たちの感覚を開放してくれるであろう。
和訳 : 長沢一郎
フランス人作曲家・ピアニストのQuentin Sirjacqの3枚目となるオリジナルアルバムをSCHOLEよりリリースします。
前作のピアノに焦点を当てた「Piano Memories」よりも、マリンバ、ヴィブラフォン、グロッケンなどのパーカッションが加わる事で楽曲にポリリズムのパターンがもたらされ、全体的にリズミカルな仕上がりになっています。
ピアノや、フェンダーローズ、シンセサイザーの音色を楽曲により選ぶと共に、ジャズやクラシックなどの作曲技法に電子音楽を取り入れた本作は、様々なジャンルがクロスオーバーし、現代のミキシング技術によって構築される新たな音楽の解釈を私たちに与えてくれるでしょう。
遠い異国の地である日本から作品を発表する事を望み、全く違う文化の中で受け止められ、その可能性を模索し、日本で経験したリアリティ、環境、物語を共有し、新たな感覚を開くことで生まれた音楽です。
クエンティン・サージャック自身が「音楽」というものの在り方を模索し続け、幾つもの可能性が混雑し内包された作品がここに完成しました。
aquarius
bodies
orange
far islands
wolfes
round dance
cold lands
it’s raining in my house
a dream in a dream
Quentin Sirjacq (クエンティン・サージャック)
フランス人作曲家・ピアニスト。
ハーグ王立音楽院及び、カリフォルニア州オークランド・ミルズ大学にて作曲と即興演奏を習得。 デビュー作「La Chambre Claire」の発表以降、ソロでの活動のほか、Chris Hooson (dakota suite)をはじめ、アメリカ、オランダ、ベルギー、ドイツ、スペイン、イタリア、イギリス、フランスなど多くの国のアーティストとコラボレーションを行っている。
また、テレビや映画、ドキュメンタリーの音楽も多数手掛け、フランスのラジオで放送された、ゴンクール賞を受賞し世界的ベストセラーを記録したマルグリット・デュラスの小説「愛人 / ラマン」の背景音楽を手掛けたほか、フランス映画「Bright Days Ahead(Les Beaux Jours)」のサウンドトラックを手掛け、SCHOLEよりリリースする。 その他、SCHOLEより2011年にソロデビュー作となる「La Chambre Claire」の国内盤を発表。翌年には初の単独来日公演も行い、東京滞在中に録音したセカンドアルバム「Piano Memories」をリリースし、dakota suiteとの共作「there is calm to be done」のリリースを記念したツアーも2015年に開催。
2016年、3枚目のオリジナルアルバムとなる「far islands and near places」をリリース。